転職クチコミを消すことだけが、採用対策ではありません。
経営者・人事担当者が陥りやすい「転職クチコミ削除しなきゃ病」とは
「新しいクチコミが投稿されました。」
この通知を見た瞬間、胸が締め付けられるような思いをした経験はないでしょうか。
転職会議、OpenWork、エン ライトハウスなどの転職口コミサイトに、厳しい評価や事実とは異なる内容が掲載されると、多くの経営者や人事担当者は焦ります。
「応募が減るかもしれない。」
「採用できなくなるのではないか。」
「とにかく削除しなければ。」
この反応は決して特別なものではありません。会社を守りたいという責任感があるからこそ、そう考えるのです。
しかし、私は長年、口コミや風評被害に関するご相談を受ける中で、一つの共通点を見てきました。
採用が苦しくなる企業は、悪い口コミがある企業ではありません。
悪い口コミに意識を奪われ、本来やるべき採用活動を止めてしまった企業です。
私は、この状態を「転職クチコミ削除しなきゃ病」と呼んでいます。
削除は必要です。しかし、それだけでは採用は変わりません。
もちろん、事実と異なる投稿や権利侵害に当たる口コミであれば、削除を検討することは重要です。
適切な手続きを行い、必要であれば専門家へ相談することも大切でしょう。
ただし、削除できるかどうかは、自社だけで決められるものではありません。
口コミサイトの審査や法的な判断が必要になることもあり、結果が出るまで時間を要するケースも少なくありません。
その間、採用活動まで止まってしまったらどうでしょうか。
採用ページは更新されない。
社員インタビューは数年前のまま。
SNSも止まり、会社の日常が見えない。
求職者に伝わる情報が、悪い口コミしか残らなくなってしまいます。
これは、口コミに負けたのではありません。
自社の魅力を伝えることを止めてしまった結果なのです。
求職者は、一つの口コミだけで判断していません。
今の求職者は、企業について多くの情報を調べています。
企業ホームページ。
採用サイト。
Googleマップの口コミ。
SNS。
社員紹介。
代表者の考え方。
そして近年では、生成AIで企業名を検索する人も増えています。
つまり、一件の口コミだけを見て応募を決める人は多くありません。
むしろ、「悪い口コミはあるけれど、それに負けず誠実に情報発信を続けている会社」という印象を持ってもらえれば、信頼は十分に回復できます。
企業が何を発信し、どのような姿勢で採用に向き合っているのか。
求職者は、その積み重ねを見ています。
採用ブランドは、一日ではできません。
採用ブランドとは、広告費をかければ完成するものではありません。
社員が安心して働ける環境を整えること。
会社の理念を言葉にすること。
現場で働く人の声を届けること。
求職者が知りたい情報を丁寧に発信すること。
こうした積み重ねが、「この会社で働いてみたい」という信頼につながります。
悪い口コミが投稿されたからといって、その積み重ねまで止める必要はありません。
むしろ、そのような時だからこそ、会社の姿勢を伝えることが重要です。
削除と採用ブランディングは、同時に進めるものです。
私は、「削除するか、情報発信をするか」という二択で考える必要はないと思っています。
削除できるものは適切に対応する。
その一方で、採用サイトを更新する。
社員の声を紹介する。
会社の取り組みを発信する。
求職者が安心できる情報を増やしていく。
この二つを同時に進めることが、長期的な採用力につながります。
削除はゴールではありません。
企業が本当に目指すべきなのは、「安心して応募できる会社」という評価を積み重ねることです。
まとめ
転職口コミは、確かに企業へ影響を与えます。
しかし、本当に採用を止めてしまうのは、口コミそのものではありません。
「削除できるかどうか」という一点だけに意識を奪われ、会社の魅力を伝える努力まで止めてしまうことです。
だからこそ、削除を目指すことと同時に、信頼を積み重ねる行動を続けてください。
採用ブランドは、一日で失われるものでも、一日で完成するものでもありません。
誠実な情報発信を積み重ねた企業ほど、求職者から選ばれ続けます。
「転職クチコミ削除しなきゃ病」から抜け出し、削除だけではなく信頼を育てる採用戦略へ。
それが、これからの時代に企業が選ばれ続けるための、最も現実的な一歩だと私は考えています。



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